日本の税制
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vまえがきいる。冷静に対処し,経済を活性化させることも大事であるが,それと同時に,足腰のしっかりした国造り,納税について真剣に考える教育が重要であると考える。 本書は,税制史の古代篇である。古代という時代は,一般的に,中世以前に属する時代区分の名称とされており,考古学でいう縄文時代の末までを原始時代とし,紀元前2世紀頃に始まる弥生時代をもって古代の開始時とするのが妥当であるとされている。この石器時代や縄文時代においては,交易(物々交換)と思われる動きが見られるものの,縄文時代末期においても,政治的な社会構成を持つに至ったという確証がない。しかし,弥生時代に入ると,政治的社会の成長が極めて急速となり,中期に入った紀元前1世紀の頃には,すでに倭(日本列島)には,100余国の小国(地域権力)が分立していたことが,中国史書の記述などによって知ることができる。 弥生時代以降,紀元4世紀初め頃に始まる大和政権による全国支配の状態がしばらく続くが,7世紀半ばの大化改新を出発点として,律令体制の形成が著しく進み,その結果成立した8世紀(奈良時代)のいわゆる律令国家が日本の古代国家の最盛期となる。しかし,8世紀初めには,すでにその体制の動揺が始まり,9世紀(平安時代前期)には,その変質期,10世紀以降(平安時代中・後期)はその解体期だったというのが,これまでの一般的な考え方(通説)である。 古代の税制というと,租庸調の説明に終始していた。しかし,税の萌芽はいつの時代から見られるのか,田租の収穫物はどんなものか,庸の元々は何か,調は誰がどのようにして納めていた物であるのか,その時の政府は,それらを納めさせてどのように活用していたのか,収支を考える財政機能があったのか,また,地方はどのようにしてそれらの税を徴収し,活用していたのか……。本書は,こうした思いを踏まえながら,日本人が日本列島に現われた石器時代,縄文時代,弥生時代,邪馬台国の時代を第Ⅰ部とし,大和政権時代,飛鳥時代,奈良時代までを第Ⅱ部として,『古事記』における税の記述,正史

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